「車は故意に走り続けた　息子を引きずったまま」

　ひとつの交通事故が二組の家族の幸せを一瞬のうちに崩壊させる悲劇。

　カナダで起きたひき逃げ事件。被害者の少年は治療もむなしく、この世を去ってしまう。
　加害者はアメリカ在住の男性会社員で、既に帰国。彼を裁くためには、国際法により事故が起きたカナダの法廷でなければならず、被害者の母親はなんとしてでも轢き逃げ犯をカナダに連れて行こうとするあまり、徐々に暴走し始める……。

　人を守るはずの法律が正義の邪魔をする壁になるという、なんともひどい話。

　ずーっと嫌な気持ちのままの鑑賞となり、ラストもスッキリせず、いやな幕切れ。
　考えさせられることは多いけど、気持ちは沈む。

何の派手さもないが、息子を轢き逃げされた（娘だっけ？）母親と、彼女を支える別れた夫と、法律を盾にしつつも悩む自身も父親である轢き逃げ犯のドラマを真摯に描いた秀作。

スカッとした結末を求める人にはオススメ出来ない作品だと思う。
好き嫌いがキレイに別れるだろう。
途中、主人公の深い悲しみに同調出来なかったのが心残りだ。
『感情だけではどうにもならない現実』を見せ付けられた。