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式日-SHIKI-JITSU-のTaiRaのレビュー・感想・評価

式日-SHIKI-JITSU-(2000年製作の映画)
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庵野秀明にとってこれ以上に重要な作品ないのでは。

2000年12月7日公開なので、20世紀最後の日本映画の一本(翌週『バトル・ロワイアル』公開というのが激アツ)と言える。つまり20世紀最後の庵野秀明である。庵野が「『式日』でエヴァは完結」と言ったらしいが、確かに彼が「彼女」を描いた作品はここで完結する。『エヴァ』が二人だけの世界に集約した物語なら、『式日』は二人だけの世界の終わりとその先の未来である。何処までが現実の物語かは推し測るほかないが、紛う事なきこれは庵野秀明の物語だ。剥き出しの庵野を体現する岩井俊二が、最後には庵野にしか見えなくなって来る。監督に監督を体現させるのは『風立ちぬ』で宮崎駿が庵野秀明に分身を演じさせたのと同じ方法論だが、どちらも背後には鈴木敏夫がいる。岩井俊二起用も鈴木案だったらしい。ちなみに劇中でワープロ打ってる岩井俊二は『リリイ・シュシュのすべて』(小説版?)を書いているらしい。「彼女」を体現する藤谷文子は原作者でもあり、多分に彼女の物語でもある。生モノとしてそこに存在する様が素晴らしい。彼女が魅力的である事で、観賞に耐えうる作品になったのは事実。映画のスタイルとしては、岩井俊二と平野勝之からの影響を感じる。35mmパートは構図こそ庵野的(または実相寺的)だが質感としては岩井と篠田昇の作ったものから影響を受けている。庵野のやろうとした「きれいな実写」における「きれい」の基準がそこにある。『ラブ&ポップ』から続くビデオカメラパートは平野勝之フォロワーとしての結果だろう。「彼女」を撮りながら自分をさらけ出す、というのは平野勝之そのもの。その成分が凝縮した特典映像『鉄道と少女』は本編と併せて観るべき。『由美香』への憧れを感じる。「彼女」に対する「カントク」の心情に嘘がない正直過ぎる自伝。作品の良し悪しは別にして嫌いになれない。「宇部の線路」に庵野が立ち返った最初の映画。
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