このレビューはネタバレを含みます
母のリクエストでシドニー・ルメットの遺作を鑑賞。
時間軸を前後させるという、いわゆる「現金に体を張れ」型の演出によってとても引き込まれた。時間軸がバラバラのサスペンス映画は複雑で混乱することが多いが、本作は決してそんなことなく、あくまでハンソン家の根強い闇が元凶となった重厚な人間ドラマといった感じだった。
兄弟二人がいよいよ窮地に立たされ、アンディのブレーキが利かなくなり、父が真相を知ったあたりからの、人間性や家庭の崩壊とそのスピード感がたまらなかった。
一見温厚で妻とも仲がいいアルバート・フィニー演じる父・チャールズは、どのようにアンディとハンクを育てたのか、そこをあえて多くは語らない。そして今まででは考えられない形相でアンディを殺し、立ち去るラスト。この、一見幸せそうに見える家庭にこそ潜む闇の描き方が上手かった。