クシーくん

ピノキオの宇宙大冒険のクシーくんのレビュー・感想・評価

ピノキオの宇宙大冒険(1965年製作の映画)
3.2
外宇宙のピノキオ!冗談みたいな話だが、本当にあった珍品。タンタンやアステリックスのアニメを製作、近年では「レッド・タートル」をジブリと共同製作した老舗アニメ会社、ベルビジョン・スタジオによる、ピノキオが宇宙へ飛び立つお話。白・米合作で言語は英語。日本では1968年の東映まんがまつりで「ガンマー第3号 宇宙大作戦」や「河童の三平 妖怪大作戦」などと併映されたようだ。

誰もが知る、ピノキオのお話の続き。一度は人間の子になれたピノキオはしばらく良い子でいたが、またイタズラばかりしていたので青い妖精さんの不興を買って人形に戻されていた。良い子にしていればきっとまた人間に戻れると慰めるゼペット爺さんに励まされ、学校へ向かうピノキオ。折しも世間は宇宙開発競争時代(!)、各国はこぞって人工衛星を飛ばしていたが、宇宙を飛び交う謎の巨大クジラ、アストロによって全て撃墜されていた。学校へ向かう途中、火星と間違って地球に到着したカメ型宇宙人、ヌートルと一緒に、ピノキオはクジラ退治に火星へと飛び立つ…。

ピノキオとヌートルが火星を冒険するのが物語の根幹だが、道中科学的知識をヌートルが解説しつつ進むのが教育アニメっぽい。ディズニー版との差異を明確にする為かピノキオを金髪にして衣装もマイナーチェンジ、クリケットも登場しない…が、前半ミュージカル仕立てになっているし、動物達の動きや描写もディズニーっぽい。キツネとネコ(ディズニー版でいうオネスト・ジョンとギデオン)もほぼディズニーのイメージを踏襲。ヌートルは亀という事になっているが、その見た目はどことなく「ラテン・アメリカの旅」に出てくるホセ・キャリオカに似ている…。

と言った具合に、ディズニーの影響を脱し切れていない部分は随所に見受けられるが、火星のディストピア描写やクリーチャーの造型、ちょっと動きはハンナ・バーベラっぽいが滑らかな作画に、宇宙空間を飛び回るクジラの体内に広がる虚無空間など、短時間ながら独自性がそこかしこに光っていて、退屈はしない。あとミュージカルの歌が何気に名曲。
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