女同士が良くて一緒になったのだろうが、男嫌いでそうなるものとは限らないわけか。妻役ジュリアンとマークがいかにも自然にそうなってしまいました、という感じで面食らった。自然でもないか。やはり飢えがあったか?ジュリアン。
希であれ女同士一緒になるも自然な事なら、女として子を求めるのも自然そうだし、その息子が"父"探しをするのも自然に思えるが、その先、不意の"父"と"母"主婦役J.との遭遇が、希な形であれ、それまで普通の家庭だった4人の関係を乱す。不倫の顛末と言えば何とも生臭いが、女同士夫婦にも男女夫婦のような夫婦間の葛藤も起きるし、息子の実の"父"がマークなら、そんな葛藤の"妻"側の圧抜きにもなってしまうという。つまり、どんな相思相愛のふたりでも歳月を重ねれば結びつきも綻ぶし、子らも大きくなればいづれ親を疎んじて余所見を始めるわけで、よくよく思えば普通のうちと変わらない。違うとすれば、もともとが女同士というところ。で、これが不幸の始まりではあっても、すぐに不幸な終わりに繋がらないところが、この話の、うーん、そんなものかというところだ。
根が独り者らしいマークがケツを蹴っ飛ばされておん出るのは暫時適切な処分という感じだが、あと2年3年したらどうだろう。モヤモヤしてる倅が熟してきたら、またきっとマークとつるみ始めるだろう。それは性的な嗜好ではなく、大人の男のありようへの関心という事だ。クレイの阿呆に付き合うよりよほどましだ。
マークの味を知ったJ.がどうなるのか火傷して火遊びの痛みを知ったと括れるもんか?厄介な立場の夫役アネット、支えるべき一家もあと数年。倅が社会に出れば、もとの女二人だけ。女同士の限界は承知のはずだし、一方、マークはJ.との短い逢瀬に見切りが付いたとも思われないし、さしあたり、娘を送り出して握り合う手と手だけが確かに感じられた。この結ばれが長いか短いか。