夢はポケモンマスター

ディープエンド・オブ・オーシャンの夢はポケモンマスターのネタバレレビュー・内容・結末

3.9

このレビューはネタバレを含みます

「八日目の蝉」を観てるようだった。この作品とは当てている焦点の位置が違うので感じ方は違うけど、ビンセントと同じ立ち位置だからか母親よりもビンセントに感情移入した。
もし自分が母親になったら見方が変わるかもしれないけど。
泣いた。泣かされた…

冒頭からすごい不満げなビンセントに両親は特に気にもとめてなくて、冒頭でベンが誘拐されちゃうからかもしれないけど、基本的にビンセントは両親から構ってもらえない場面が多い。ベスも責任感じて憔悴しきってなおのことビンセントをほったらかしにする。それどころかケリーすらも放ったらかし。
ケリーはまだ赤ちゃんだったからか、あまり影響は受けてないように感じるけどビンセントは自我も芽生えて愛情を沢山貰わなきゃいけない時期に蔑ろにされたような幼少期が災いしてひねくれた子になってしまった印象。

母親はビンセントに対して終始身勝手で、終盤の「許して頂戴ね」にすごい憤りを感じた。許せるわけない。でも、誘拐の原因を作り出したのは自分だし、何より母に愛されたい気持ちも凄くわかる。
ビンセントの気持ちがとにかく切ないし、辛いし、やるせないし後悔しかない。

ベンがサムとなってからの、ダンスホールで踊るシーンや、バスケのシーン。
自分より秀でた弟を見ると更に自分を卑下したくなるだろうし、してたかもしれない。
どの場面でもビンセントの心の内を知ることが出来ないのがこの作品の良いところかもしれない。

サムが1度ジョージの家に戻るシーンで初めて母親に感情移入した。我が子が自分を母だと呼んでくれないのはもちろん、憎き誘拐犯である女を母だと思い、尊重してる所も私は辛かった。何があろうとあの女のしたことは許されるべきじゃない。
ジョージは巻き込まれただけだけど母親の立場になるとジョージの「サムのあんな悲しそうな顔は初めて見る」ら辺のセリフ最もだし、分かってるけどそもそもこうなったのあの女のせいだかんな!!!って言いたくなる。
誘拐された子が戻ってきてはいめでたし、で終わらせないのがリアル。
我が子が誘拐犯をママって呼ぶの見たくないし帰りたいなんて言われたらもうどうすればいいかわからん。あの場面の心情めちゃくちゃしんどい。

ラストにもやられた。
ジョージと一体どんな話をしたのか分からないけど親子より強い兄弟の絆に泣かされた。
ビンセントが罪を告白するシーンもサムがそれを一蹴してしまうシーンも全部自分の弟と重ねて見てしまった。
当日弟たちに会いに実家帰ってたから尚更泣いた。

いい映画だった。