まぬままおま

PicNicのまぬままおまのレビュー・感想・評価

PicNic(1996年製作の映画)
4.0
岩井俊二監督作品。

衣装や舞台が凄くて、唯一無二の世界観を構築している。

ツムジの過去が明らかになるシーンがすごい。まさに夢精。

ツムジとココがはじめての塀をつたった“ピクニック”で遭遇する出来事が面白い。それは教会で子どもたちは賛美歌を歌い、神父に出会うことである。ココは何故か賛美歌を口ずさむことができる。サトルは神父から聖書をもらう。ココの過去を想像可能にするし、聖書は最後の“ピクニック”の動機になり得るからおもしろい。

最後の“ピクニック”でサトルが塀の外に出るシーンもすごい。まさしく死を表現していて、サトルがモノ化する様がすごい。これはサトル演じる橋爪浩一さんの演技も素晴らしいからだと思う。

本作は精神病院に収容された青年らが逃避をする物語である。だけど逃避をする場所は、あくまで精神病院の延長の塀の上である。そして行き着く先はユートピアではない。〈私〉がいなくなっても地球はあり続ける。
つまり塀の外へ出て、誰かの車をかっさらい外国にでもいく逃避はなされない。自らの精神を赦す理想郷など存在しない。現実は現実のまま淡々とあり続ける。
そんな逃避物語にありがちな展開を挫折させることに本作の面白さはある気がする。では理想郷が存在しない現実で、私たちはどう生きればよいのだろう。問いは宙づりのままである。