【第58回ヴェネツィア映画祭 審査員特別賞】
『パラダイス』三部作で知られるウルリヒ・ザイドルの長編フィクションデビュー作。ヴェネツィア映画祭のコンペに出品され賛否両論を巻き起こした。
「ドッグ・デイズ」とは7月上旬から8月中旬までの「夏のうち最も熱い期間」を示す言葉。
34度を超す猛暑の中、普通の人々の背意欲や暴力が溢れ出す様を描く群像劇。
ウルリヒ・ザイドルの中では『パラダイス』三部作の次に好き。今作を分解したのが『パラダイス』三部作ではないかと思う。
不快なお喋りと歌で人々を怒らせる女、愛人とSMプレイに興じる中年歌手、死んだ妻の誕生日にストリップさせる老人など狂気としか言いようがない人々をドキュメンタリックに描く。
非常にウルリヒ・ザイドルらしいぶっ飛んだキャラクターとそれを淡々と描く手法が既に完成されている。
「自分は何を見せられているんだ?」と困惑するしかない変態的な映像の数々に飲み込まれる。
灼熱地獄なんて言葉があるけど、まさにその通り。欲に支配された人々が墜ちた地獄を描いた作品だ。
終わり方も好き。あることに巻き込まれたお喋り女が家々の警備システムを作動させていく。本能と理性の危うい関係を象徴させたようなラスト。
いま少し危うい立場にあるザイドルだけど、ものすごく好きな作家なので改めるところは改めて作り続けてほしい。