Yoko

アパートの鍵貸しますのYokoのレビュー・感想・評価

アパートの鍵貸します(1960年製作の映画)
2.9
 保健会社に勤めているアパート暮らしの男性は上司のために夜な夜な自分の部屋を貸出して昇進を狙っている。夜に部屋が使えないために自分の恋愛なんて夢のまた夢である彼は、密かに恋をしているエレベーターガールに声をかける…。

 この作品はコメディという視点で見れば良く出来ていると思う。
オマージュとして使いたくなる挙動はあれよあれよと盛り込まれており、かなり楽しく出来上がっている。
ただ、ラブロマンスという視点で見れば二人の恋模様をこれほどまでに応援したくない、むしろお邪魔虫の方に感情移入してしまうストーリーは中々見ることが無くて新鮮だった。
 
 しかし、この新鮮味は自分にとって不快感が大部分を占めたものであり、その理由として、主人公の想い人に対する優しい嘘ないし自己犠牲を厭わない風で発せられる周りの人々(隣人や上司)への台詞が、立身出世のための意地汚い欺瞞にしか見えなかったことが挙げられる。
また、当時の時代柄と言えば簡単だが、作品全体から男尊女卑の空気がプンプン感じ、男である私から見てもかなり居心地が悪いのが正直なところ。
ビリー・ワイルダー監督であれば、この辺りの悪習においても警鐘を鳴らすような風刺があってもよかったのかなという想いが強く、オチとしても無粋なく上手く決めているが故に、これってどうなの?という気持ちが強くなってしまった。
コメディとして「オチ」ていれば最高だった。

 コメディ作品として評価されている今作に対して、ロマンス視点での批判めいた感想は強引でお門違いであることは承知の上ですが、正直好きにはなれない作品でした。
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