そーた

イージー★ライダーのそーたのレビュー・感想・評価

イージー★ライダー(1969年製作の映画)
4.1
2つの自由

映画を見て放心状態になったことが2度あります。

1度目は「縞模様のパジャマの少年」という映画を見たときで、
2度目がこの作品を観た時でした。

見終わったあと頭が変な状態になってしまって、ウィスキーをかぶ飲みして、酔っ払ったまま敢えて不味いラーメンを食べに行きました。
何だか凄くボロボロになりたかったの。

僕を完全にノックアウトしたアメリカン・ニューシネマの代表作。
自由を求めアメリカの荒野を放浪する二人のバイカーの物語です。

この映画ほど僕たちが漠然と抱いてる自由という概念に対して痛烈な問題提起を投げ掛けてくる作品はないと思います。

ただ、自由というのが漠然としてるのは日本人だからなのかもしれません。

自由って日本語だとそのまんま自由なんだけど、英語だと2つあるんですね。

freedom と liberty。
freedomは抑圧や束縛がない状態で、
libertyは戦いや運動で勝ち取った自由。

この2つの自由がこの映画では描かれていて、主人公達はもちろんfreedomを追い求めているんです。

途中でヒッピーの集落が出てくるけれど、あそこの自由がlibertyなんだと思います。
こちらの自由は社会性の中での自由だもんだから主人公達はそれを拒否するんです。

でも、社会性をルールと捉え直せばすごく現実的な自由ではある。

主人公達もそれを分かってはいるんです。
それでも、求める自由とは違うんだと言わんばかりにバイクで爆走するわけ。

その心の矛盾や葛藤がLSDの幻覚シーンでうまく描かれている。

LSDで色んなタガを外してみたら収拾がつかなくなってしまうの。

この経験が二人に決定的な違いをもたらします。

二人の主人公を理想と現実とにそれぞれ分けてみると、このLSD体験から理想と現実がキッパリ線引きされてしまうんです。

自由を説くことと自由であることは別の話。
劇中語られるアメリカという国が孕む矛盾です。

その言葉を象徴するようなラストシーン。

理想と現実が迎える衝撃の結末です。

僕はこの結末に相当な衝撃を受けてしまったというわけ。
僕が求める自由とは何なんでしょうか。
それともそんなものは全く求めていないんでしょうか。

少なくとも言えるのが、僕はfreedomの方は求めていないということです。

そうそう、不味いと思ってたラーメン。
あれ以来通ってしまうほどにハマッています。

実はそんなに悪くなかったって事、身の周りに意外とたくさんありそうです。

自由を求める前にまずはそんなものを探してみる。
実はそれがlibertyへの第一歩なのかもしれません。
そーた

そーた