でら

旅立ちの時のでらのレビュー・感想・評価

旅立ちの時(1988年製作の映画)
5.0
家族間の絆や愛し合っているが故のすれ違いがテーマ。子どもが成長して、刻々と長い逃亡生活に疑問や歪みが生じ出す。
愛しているからこそ、どうしても離れたくない。ずっと一緒にいたい。でも愛してるからこそ旅立たなければ。
仲が良くて支え合って生きている素敵な家族。だけど偽り続けることはできない。みんな家族想いでその優しさが切ない。
「もっと自分の事を考えたら?」「何故他人の人生まで背負おうとするの」
自分の人生は自分だけのものなのだから。
「他人に振り回されるな。お前は自由だ」
台詞と表情の一つ一つが紡ぐ心情がよく読み取れるような、役者の演技もとにかく素晴らしい。

ダニーの抱えていた悩みと哀しみの揺れ動きに、ベートーヴェンピアノソナタ 第八番はぴったり。マドンナに繋げちゃうところが、本当の自分を見せたいような隠したいような気持ちが現れている。

「Very happy with you.」
心からそう思って溢れるような、彼の手に入れた幸せ。あまりに自然で甘酸っぱくなるような愛のこもった言葉。悶々と悩んで夜走り出して彼女の家に忍び込むシーン。まるでロミオとジュリエット。ぶかぶかのコンバースを履かせてあげるのも最高だった。とにかく可愛い。

ダニーが彼女に本当の事を打ち明けるシーン。どこまでも素直で正直で他人に優しい。だんだんと感情が抑えきれず涙を流す。なんて美しいのだろう。この姿に心動かされない人はいない。全身全霊で守りたくなるわ。秘密を打ち明ける演技やらせたら世界一なのではと思うほど。

本当の自分を誰にも言えなくてずっと苦しかった。自分の事をキチンと知ってもらいたい。こんなにも胸が締め付けられるラブシーンは生まれて初めて。
家族の事以外でできたもう1つの秘密。本気で愛したいと思った人。
好きな台詞は「秘密が多くて あなた大変ね」
新しい秘密は彼女と共有ができた事でダニーがこの上なく幸せそう。そして自分の音楽を認められた時の込み上げる歓びで舞い上がる彼の無邪気さとお茶目さが、たまらなく愛おしい。
みんなが彼を愛してるのがよく伝わってくる。両親の自慢の愛しい我が子。やんちゃな弟の面倒見だっていい。彼が選んだ道なら大丈夫。ダニーはそういう子です。初めて逢う祖父母はきっと、彼がどれほど両親に愛をもらって大きくなったかがすぐにわかるはず。

17歳のリヴァー・フェニックスをこの作品で見ることができて幸せです
でら

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