でら

グリーンブックのでらのレビュー・感想・評価

グリーンブック(2018年製作の映画)
3.5
『黒人に生まれついた』ドク自身が黒人を差別と偏見で見ていたことに気づくのが、それが黒人を差別している『白人に生まれついた』彼との旅の中でという…
しかしそのトニー自身も偏見の目に晒されて理不尽極まり無い社会を知ることになったんだな。トニーもまた、イタリア系移民で、アメリカはさまざまな人種国籍の人が集まってできているのに、あまりに露骨で幼稚な差別描写はこの国で起きているありふれた事実だったわけで…

お互いがお互いで知らなかった世界を補っていくような、この二人だけの二人らしい関係が築かれていく描写がとても素晴らしかった。セリフの節々をのちの演出で再現をして、皮肉が効いてる演出も小気味良い。
最初のうちは音楽家であるドクが黒人という理由でドクの音楽なんて意に介せずといったトニーが、ドクの奏でるピアノに引き込まれて夢中で耳を傾けて笑顔で手を叩くまで、心が温まる。
『あんたのピアノはあんたにしか弾けない』ドクが求めていた言葉なんじゃないだろうか。音楽という、本来国籍も人種も性別もマイノリティも誰であろうとすべての人に分け隔てなく持っていてもよいはずの才能を、黒人だというだけでどれほどのものを奪われてきたのだろうか。
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