戦争挟んで何年にも渡ってかつての仲良しグループに高松英郎がしぶとく付き纏う。菅原謙次と沢村美智子のすれ違いメロドラマとしてだけでも十分に焦らしまくる田中重雄監督の腕前が冴えているのに、まさかの準主役か？と珍しく思っていた山本富士子が後半全部持っていく。旦那に三行半をくらうシーンでは、部屋のなかに豪雨のシルエットが覆われて、対話のあいだに静かに停電して女中が蝋燭を持ってくる。連れ込み宿にも同様に雨のシルエット。宿の外から向かうのは菅原賢次じゃなくてお富士。男任せの人生を自分の手で一旦リセットするような。畳にナイフ、土瓶に睡眠薬。気がついたらノワール。「東京おにぎり娘」からこのような作品まで撮ってしまう田中重雄監督ほんと好き。

終盤いきなりアメリカのフィルム・ノワールみたいになって凄かったな。序盤の海岸のシーンは韓国映画みたいだし、見どころが多い。

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