ユカリーヌ

クワイエットルームにようこそのユカリーヌのレビュー・感想・評価

3.9
【過去に観た映画】2007.12.8

精神科病院の女性ばかりの閉鎖病棟という特殊な空間でのお話。

日本では、精神病ものってタブーな風潮があるのに、これだけ大胆に撮った映画も
珍しいのではないだろうか。

重いテーマを根底に敷き詰めながらも独特の笑いをちりばめ、それでいて一人の女性が「再生」していくさまを描く。

謎解き部分があるので、詳しいストーリーは明かさない方がいいし、これは観る人に
委ねる部分も大きい。

おもしろい映画だったが、
これはかなり観る人の経験値によって感じ方が変わってくる映画かもしれない。

私は原作は未読なのだが、パンフに歌人の俵万智が
書いていたが、「芝居村の人が映画村に行ってしまうのは寂しいし、芝居の方がいいと思う作品が多いけど、この作品は
映画にしかできない方法で心に迫ってくる」とあった。
見終わって、私もそれは感じた。

心理劇にするなら、ダンゼン、舞台の方がよかった気もするが、映像ならではのおもしさが
十分に感じられた。

主人公 内田有紀がまさにヨゴレ役。
体当たり演技だった。
彼女のファンの男性は正視できるかなあ。

女は悲しいね。
女であるには努力が必要なんだ。
女であるがゆえに壊れてしまうことになるのに、壊れてしまうと「女」でなくなってしまう……。

内田有紀の壊れていく様は、痛いほど心にしみた。
かつての自分が重なって、不器用さにシンクロし、いとおしさが増し、苦しいほどだった。

最後は救いを残して、終わるので彼女は「再生」できたのだろうと思う。
いや、そう信じたい自分がいた。

内田有紀がクドカンのナマのお尻を両手で包み込むように触り、「おちつくぅ~」というシーンがある。
ナニをするでもないのだが、
好きな相手のどこかを触っていると落ち着くというのはわかる気がするけどねー。

脚本、監督の松尾スズキは、
「登場人物全てに物語がある群像劇が作りたかった」
とあったが、
そのキャラの活かし方がうまかった。

病んでいたり、みんなどこか変なキャラなので、つい奇抜さだけで流してしまいそうなのだが、それぞれの抱えたドラマが薄っぺらくなく感じたので
ただ笑うだけのものとは違っていた。

それに、キャストが結構豪華で、意外な人もたくさん出ていた。
演技力にもよるのだろう。

大竹しのぶが久しぶりに悪キャラだったが、この人、悪いキャラ演じる時って、ほんと、イキイキしてるなあ。

でも、妻夫木くん……二枚目キャラはもう捨てたのかしらん。

人は傷つけられたり、悲しみを追うと心が「壊れたり」「閉ざしたり」するのは防衛本能だろう。
そうすることで辛さから解放されるなら それでいい。
実際に、私と関わった人でそうなってしまった人は
何人かいた。

でも、傷つけられたことよりも
傷つけた時の方がその苦しさは大きい。
誤解を恐れずあえて言うが、
傷つけたものは、狂って、楽になってはいけない。
自分で受け止めていかなければいけない。
ユカリーヌ

ユカリーヌ