エイガオタb

ソフィーの選択のエイガオタbのネタバレレビュー・内容・結末

ソフィーの選択(1982年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

実は「ホロコースト」を題材にした映画。
物書きの主人公、正体不明の情緒不安定のネイサン、メリルストリープの三人の珍妙な友情劇を長々と見せられながら描かれる。

珍妙な~と表現したのは、主人公はソフィーに少し惚れてるというか、ほっておけない危ういソフィーが心配で友人付き合いしてる感があるんだが、ネイサンが明らかに頭がおかしいキチとして描かれてる為に、なんで男二人女一人の友情関係が成立するのかが理解不能だからだ。

事実、ネイサンは何度か勝手な妄想でキレるのだが(オープニングの最初の出会いシーンからキレてる)、その後の仲直りシーンを本作はとにかく「省略」する。つか、こんだけ罵倒した後に「すまなかった」で諍いが終わるのがマジ理解できない。散々好き放題暴れまわったあげく「ごめーん」で話を一方的に終わらせる。僕が主人公なら、こんな危なっかしい妄想癖で、人の話を聞かない男とは距離を置く。この滑稽な三人組を美談っぽく描こうと製作陣が躍起なのは分かるんだが、ただの情緒不安定集団にしか見えない。

そしてネイサンは後半、精神異常をはらんでいると告げられる。

うーん、今更。この話はどこに行くんだろうか?

主人公も事あるごとにソフィーと寝るチャンスを窺がっているように見え(実際、何回かチャンスはある)、ネイサンのソフィーを寝取られるという妄想もあながち嘘ではないのも困るw

精神異常者と、ナチスに与して生き残ったソフィー、口を開けば友達だからしか言わないバカ主人公、マジで誰にも感情移入できないw。ただ見事なのは、激動の人生に翻弄されるメリルストリープの常にうつろっぽく危なっかしい女性の演技(顔は好みではないが艶っぽいのだ)。目線やしぐさが心に傷を負った女性というのを完璧に体現してると思う。日本の声優は優秀だが、吹き替えでは彼女の演技力は堪能出来ない程に異次元レベルの演技力。

思うに映画全体に通ずる空気には、「今は平静を装ってはいるが、人間というのは一皮むけば何を隠しているか分からない」という観念が流れていると思う。それは一見知識人に見えるネイサンが実は妄想癖のある精神疾患の持ち主であったり、ソフィーが同郷同胞であるポーランド人を絶滅に追いやろうとナチスに迎合して過去があったり、主人公がネイサンと結婚するソフィーに平気で「愛してる結婚しよう」と言ったり、裏に何かを隠しながら生きる人間が描かれてると思う。つまり平和になっても戦争の痕は隠れているだけで存在してるんだというメッセージだ。

そして過去からは決して逃げられない。

この映画は後半にして、ようやく破滅の運命の足音が聞こえてくる。

後半落とすために前半は上げねばならず、そのために退屈で平和でしょうがない前半40分の日常シーンがある。構成的に計算されてる。まぁ、故に前半は退屈でしょうがないんだがw

ソフィーの最後は必然だと思った。

もう二度と愛した者を棄てる事は許されないのだから。

ただ2時間31分かけて引っ張った割には、「ソフィーの究極の選択」は予想の範疇内だったかなぁと(すいません)。思うに、本作はナチス否定映画としてではなく、間接的な戦争反対映画ではあるんだけど、ただ罪と罰の話だと思う。ネイサンとソフィーが綺麗に死んでいるのは彼らにとって救いだった。この映画における人間の業は「審判の結果」ではなく、日々繰り返される「朝」と同じだというエミリーディキンソンの詩が胸に響く。

退屈な映画だったが名作だと思う。鬱映画でも何でもない。