三四郎

モナリザ・スマイルの三四郎のレビュー・感想・評価

モナリザ・スマイル(2003年製作の映画)
4.8
実に奥行きのある、丁寧に描かれた傑作だ。古き良きアメリカ、その見せかけの美しさと幸せの世界の裏側にある、大学当局、親たち、教師たちと女学生たちの葛藤。

主人公であるリベラルな女性教師は、保守的な名門大学の女学生たちに「新しい世界」、「新しい生き方」を見せ、さらに示してゆく。彼女の教えは、一方では正しい、しかし、彼女が全て正しいわけではない。生き方はそれぞれだ。
イェール大学法学部に進みたいという意志を持つ優秀な女学生。しかし、卒業後はハーバード大学に通う彼氏との結婚を考え家庭に入るつもりでいる。そんな女学生に「両方手に入れればいい。仕事と家庭両立すればいいのよ、できるわ」と説く。だが、その優秀な女学生は、イェール大学法学部に合格するが、彼氏と結婚し家庭に入ることを選ぶ。
「彼じゃなく私が決めたんです“大学を捨てる”と。学問のために家庭を犠牲に?弁護士を捨てて後悔すると? 中途半端な家庭を持つ方が後悔します。自分で納得した決断なんです。逆らうようですが…。先生の考えは知ってます“絵の先を見ろ”と言われるけど、先生の考える“妻”は“魂を売り渡した女”“深みも知性も関心ごともない”
“生き方を自分で決める”のなら、これが私の生き方です」
優秀な女学生の出した結論こそが、彼女自身の進むべき道だ。たしかに、女性教師の説く生き方もできないことはない。両立している人は沢山いる。しかし、その人にとっての幸せは、他人が考え、他人が教えることではない。

この映画の奥深いところは、女性教師が女学生たちに「新たな生き方」、「新たな道」を見せるだけでなく、この女性教師自身も女学生たちから、「違う道もあるのだ」、「生き方は人それぞれだ」と、女学生たちの決断を通して教えられている点だ。
先生が全て正しいわけではない。リベラルが新しく先進的で、保守が古臭く因習的だとも限らない。そうこの作品は語っているような気がする。

エンドロールも素晴らしい!戦後のアメリカ、その繁栄、その虚構…。アメリカ黄金時代の女性たち。
三四郎

三四郎