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シルビーの帰郷のCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

シルビーの帰郷(1987年製作の映画)
2.7
【家が水没してもへっちゃらさ】
「死ぬまでに観たい映画1001本」掲載のカナダ映画『シルビーの帰郷』が先日ユーロスペースの特集で上映されたそうだので、私は家で観賞してみました。

母が豪快に車ごと崖から転落する、ミニシアター映画の落ち着いた雰囲気と反する展開からこの映画は始まる。姉妹のもとへ世話係としてやってきた親戚のシルビー(クリスティン・ラーティ)との日常を本作は紡いでいく。

四季を通して、水が氷に変わったりする橋が魅力的に映っており、シルビーが橋の上で羽を伸ばしている場面が美しかったりする。本作は、ヴィジュアル路線の映画であり、地味ながらも印象的なシーンがところ狭しと並んでいる。

シルビーは不思議ちゃんである。家が洪水で水没しても笑顔で朝食を作り始めたり、火がカーテンに引火しているのに「ハッピーバースデートゥーユー」とにこやかに歌いながらのほほんと火消しを行ったりする。この異様な光景は『漁港の肉子ちゃん』を彷彿とする。

そんな世話役の間で姉妹は苦悩するのだが、それをファッションで表現しているのがまた面白い。ド派手なファッションでカフェに行き、コーラを注文すると知り合いがいる。その知り合いの視線に恥じらいを感じる方と適応する方を対比させる。暗にセリフで恥じらいを表現するのではなく、行動で恥じらいを表現しているきめ細かさがあります。

一方で、本作はどこか『漁港の肉子ちゃん』に近いスピリチュアル系の気持ち悪さがあります。どうしても「人間、生きているだけで幸せなのさ。」と言いたげな映画には拒絶反応を示すのだが、本作もシルビーの自由奔放な生き様を通じて肯定される人生を押し付けられている感じがして演出は面白いものの、あまり乗れなかった。
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