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WANDA/ワンダのあのレビュー・感想・評価

WANDA/ワンダ(1970年製作の映画)
5.0
売店の前に置き去りにされたワンダが、一人アイスを持って立ち尽くす横を、車の音が遠ざかっていくところが神がかり的によかったです。

まず告発となっていないところが本当によかったと思います。恐らく知的障害か発達障害で、どうしようもない男たちに置いていかれないようついていくしかないワンダに、殆どの心情を語らせず、またどうしようもない男たちの中に置き去りにする徹底的なリアリズムには流石という他ありません。このワンダの絶望には、どんなポリティカルな評論も陳腐にさせる孤高さがあります。

ワンダが女性であるとか、ワンダの経済状況であるとか、学歴であるとか、そんなものはミスリードで、銀行強盗のデニスにしかかろうじて存在意義を感じさせてもらえず、そしてなんとか初めて人との繋がりを感じかけた瞬間に、デニスの死をもってまた流れ者になってしまったワンダの悲劇をそのまま受け止める勇気が必要なのでしょう。

個人的にワンダと一部特性を共有しているところもあり、裁縫が遅すぎて仕事を首にされたワンダや、簡単な買い物すらできないワンダには、なんともいえない気持ちを抱きました。周囲の人間の、面と向かって言うほどではないが、できれば居なくなって欲しいという目線は本当に痛いものです。

それにしてもデニスは、フェリーニの「道」でいうザンパノと芸人の両方のパーソナリティを持っているようで、人間味があって面白かったです。この映画は、人間性を取り戻したザンパノが死んで、ジェルソミーナが一人取り残された「道」と言えるような気がしました。
あ