ボブおじさん

バグダッド・カフェのボブおじさんのレビュー・感想・評価

バグダッド・カフェ(1987年製作の映画)
3.5
ワールドカップで絶対に勝たなければいけないコスタリカ戦に負けて、どうにもこのままでは眠れない。そんな時は何を見ても心に響かないのだが、何故だか選んだのがこの1本。

かなり前に録画して1度見ているのだが、何とも掴み所の無い映画だった記憶がある。こういう言い方をすると、この映画のファンには申し訳ないのだが、いわゆる本命の映画を見る気にならなかったので何か〝フワッとした〟映画を見たくなったのだ。

アメリカの砂漠に佇む寂れたガソリン給油所兼モーテル兼カフェに、夫とケンカ別れしたドイツ人旅行者の太ったおばさんが辿り着く。無愛想な店の女主人は当初、彼女を敬遠していたが、彼女は不思議な魅力で生意気盛りの娘や奇妙な常連客たちの心を癒していく。

このおばさん、決して美人でも雄弁でもないのだが、菩薩のような不思議な抱擁力で周りを包み込む。ドイツ人の気質なのか、変に押し付けがましくないのが心地いい。

ふらりとやって来た謎の女性が、閉塞感のある小さな町の人々の心に、癒しと潤いと笑顔をもたらすという内容は、フランス映画の「ショコラ」を思い出すが、この映画にはジュリエット・ビノシュやジョニー・デップのようなスターは登場しない。

大きな事件が起こるわけでもなく、ある意味退屈な物語だが、心が塞いだ時の一服の清涼剤のように、明日への活力を与えてくれる映画ではある。