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牝犬のENDOのレビュー・感想・評価

牝犬(1931年製作の映画)
4.0
夜の街角で不意打ちのように出会う場面から始まる三角関係。シモンの妻の戦死したはずの夫が浮浪者として戻ってくる暗闇はコメディなのに妾宅の暗がりは危険。女衒野郎デデの面構えがポール・ダノを髣髴とさせて不敵。路上演奏の間に起こる白昼の殺人はあまりに静か。デデが友人に人生訓を語るとウェイターの持つトレイが閃く。2度目の閃きはナイフが無造作にベッドに投げ落とされた時だ。シモンの伊藤雄之助ばりの気弱な怪演と浮浪者になってからの楽しいやり取り。シモンの自画像が車の座席から後方に視線を送るも本人はチップをもらった感動で妻の前夫の穴兄弟と(妻の死を祝って)飲みに行く算段で盛り上がって終わるラストに泣き笑い。余談だがルノワールの自伝によるとデデ役のジョルジュ・フラマンとリュリュ役のジャニー・マレーズは実際に交際していて公開直後事故に遭いリュリュのみが亡くなったそうだ。シモンはマレーズに恋焦がれておりその葬儀で頽れたという逸話は現実との境界をより一層曖昧にさせる。『スカーレット・ストリート』のジョーン・ベネットに比べると悪女としての強さはない分シモンの巨躯にのしかかられた彼女の悲哀も強まる。曖昧な倫理の上で漂う人々。
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