ENDO

狩人の夜のENDOのレビュー・感想・評価

狩人の夜(1955年製作の映画)
4.5
ミッチャム演じる偽伝道者の悪意は翳りがなくて素晴らしい。聖歌503番『Leaning on the Everlasting Arms(主の御手に頼る日は)』を口ずさんで街灯の下、ハーパー家の庭先にある柵越しに登場する男。まだ出会ってすらいないのに。そして人差し指から小指にかけて彫られたLOVE & HATEの小噺が大袈裟な割に中身が空っぽで、それ故に人を惹きつける異形な存在。船で逃げる際、逃げ切られて悔しそうに「んーんー!」と唸る動物的リアクション。『バッド・ルーテナント』のカイテルみたい。それはギッシュにショットガンで撃たれた時の情けない甲高い悲鳴にも感じる。

対するウィンタースは主体性が全くないまま、子供を一瞥もしない愛のなさ。ミッチャムのポケットに入ったナイフを発見して恍惚の笑みを浮かべる様にゾッとする。幼い娘に対し、脅すように金のありかを問いただし、虐待を仄めかす暴言を玄関口で聴きながらも、何も言わずに三角形の屋根が強調された、寝室のベッドに横たわって無抵抗で絶命。母の死体を引き摺る音を隣の部屋で聴きながら迎える朝。そして車ごと川に沈められるわけだが、金髪が海藻のように揺らぐ美しき死体。

それを目撃した優しき艀住まいのアル中老人は、冤罪を恐れ通報できず完全に人格が崩壊する。悪の影響力。

幼さなさ故疑うことを知らず、追いかけてきたミッチェルに人形を投げ出して抱きつくパールは憐れなまでに健気で落涙。地下室で虐待されそうな兄を見て地団駄を踏む上下運動や、ハッとして目を見開く動きなど、幼女が持つ反応みたいなものが時折画面に現れてビビる。見直した上で1番の発見となりました。

ジョンは「あいつ寝ないのか?」と思わず口にするほど、人間ばなれした執拗なミッチェル追跡、そのシルエットと声が痕跡となり、そして今そばにいることに絶望しながら川下りを再開。恐ろしい。

孤児であるルビーという娘がミッチャムに一目惚れするわけだが、ルビーと同年代の男子の進路を遮って、瞬時に画面内にフレームインするともう惹かれているのだ。性の目覚めによって、その寝室の壁に落ちる影はウィンタースと同じく三角形を象る。

ギッシュの冷静な愛も素晴らしい。ベタベタ優しくせず、自立を促しながら手を差し伸べる。ジョンが思わずリンゴを齧りながらギッシュの手に触れた瞬間に涙腺崩壊した。

そしてミッチャムの有罪が確定し、近所のお節介ばあさんが口火を切ってリンチを煽りだして本当にウンザリする。

『Leaning on the Everlasting Arms』をミッチャムとギッシュが合唱しだして困惑。
同じ信仰を見つめながらも相容れない、その深い断絶。寓話を装いながら強烈なイメージの連べ打ちに喰らう!一応クリスマス映画です。
ENDO

ENDO