このレビューはネタバレを含みます
特撮関連のイベントで映像を観て興味が湧いたので視聴。48分とは思えないほどの密度で衝撃を受けた。
初代仮面ライダーの詳細までは知らないのでオマージュかどうかは定かではないが、主人公が博士により改造人間にされてしまい、その博士の息子を救い抜いてほしいという命によりライダーに変身して守り抜くというお話。
個人的にとても強く『ターミネーター』のオマージュというかリスペクトを感じた。ひとつはZOとネオ生命体であるドラスの異人の対比。これは『ターミネーター2』のほうがイメージとして近い。守られる対象の宏がジョン・コナーの立ち位置であり、それを守るZOとそれを狙うドラスが、そのままT-800とT1000の構図に当て嵌まる。もうひとつは映像的な観点で、こちらは無印版『ターミネーター』に近い。92年の作品ということで、映像表現の創意工夫が非常に多く受け取れる本作、その中でも途中のドラスから分離した蜘蛛の怪物のシーンはまさしく『ターミネーター』終盤の爆発したタンクローリーから這い出て来たT-800がサラとカイルを追いかけてきたシーンのようなコマ送りの手法で撮られていたように感じた。映像技術に限界があったからこそ、不気味さと恐ろしさが際立っており非常に緊迫したシーンになっていた。当時の流行のSFの形を取り込んだ作風なのだろうけど、上手く仮面ライダーの文化、日本人の文化に落とし込んでいると感じた。
本当に感動したのは後半の工場内でのZOとドラスの一騎打ち。このシーンの中で2分ほどの戦闘がワンカットで回されていたのには唸った。細かいエフェクトもしっかりと後付で挿入されていたし、役者とカメラマンの全ての動きが極めて正確に実行されたのだと思うと胸が熱くなる。自分は様々な作品において、ストーリー内容と同じくらい作品としての魅せ方の工夫であったり情熱を感じる要素をじっくりと味わいたいので、このシーンでもともと高かった満足度はピークに到達した。
終幕の夕暮れに消えていく主人公に宏が「お兄さん……ライダー!」と寂しくも力強く呼びかけるシーンも最高。上質な特撮作品を手軽に味わえる名作だと思いました。
追記 : 蜘蛛の怪物と工場内にいるドラスの本体ともいえる生命体の子供、それらの表情の造形が神懸かっている。眉間のシワの寄り加減といい目つきといい本物の苦しみや憎しみが宿っているようにしか見えなかったし、子ども的なトラウマも余計に真に迫るモノになっていると思う。