このレビューはネタバレを含みます
一言感想。
イヴァンが一番先に盗まなければならなかったのはパンツ(下着)だったと思う。
長文感想。
第二次大戦下のフランス。
母、子供(兄妹)の三人がパリから南仏に避難する途中、ドイツ軍の空爆にあい、その時たまたま近くにいた青年に助けられる。イヴァンと名乗る17歳の青年。未成年だから少年と呼ぶべきかもしれないが、13歳の息子と対比してここは「青年」と呼ぶのがふさわしい気がする。
息子フィリップはイヴァンと一緒に行動する事を望むが、母は頑なに拒む。それは見知らぬ男への警戒心か、イヴァンの粗野な振る舞いからの身分の違いを感じた一種のプライドからなのかと思われたが、親子の会話から母が学校の教師であったことが窺い知れ、おそらく子供たちへの悪影響と道徳心の崩壊を恐れたのだろう。
野蛮ながらも役に立つイヴァンの行動とフィリップの度々の説得で母の気持ちもやわらいでいくが、それにしても13歳の息子にのしかかった負担、プレッシャーが今までどれだけのものだったか、この母は解っていなかったのだろうか。必死でイヴァンを繋ぎとめようとするフィリップの姿に私は彼が気の毒でならなかった。
イヴァンも本当はこの家族と一緒にいたいくせに本当にこの二人は素直じゃないと言うか、よっぽどフィリップの方が大人に見える。
自分の事は話そうとしないイヴァンが唯一してくれた友人の話。
物語の最後に、この話を思い出す。
……
ここからは、わかる人だけ聞いてほしい。
イヴァン役のギャスパー・ウリエルを初めて見た時「涯くんだ!」と思った。
「涯くん」とは、漫画「無頼伝 涯」の主人公である。
短髪で、頬に傷があり、施設上がりという役どころもあいまって「ハンニバル・ライジング」の冒頭のシーンでも「涯くーん!」と叫んでしまったほどだ。
「無頼伝 涯」が実写化されたら涯くん役は彼しかいないと密かに想っていたのに……
残念です。