ベンガルの田舎で暮らしている貧困層の家族が、「甲斐のある人生」を模索するうちに、定住と移住の二者択一を迫られてしまう。インドの格差社会を題材にしている、ヒューマン・ドラマ。「オプー3部作その1」と称されている。
主人公を明確にせず、ファミリーの各人にスポットライトを当てていくスタイル。人間として生を受けたことによる因果が蠢き、負の連鎖が必然的に発生している土地を舞台にして、人間讃歌が説かれていく。
家庭を支えるために出稼ぎを繰り返す夫、家庭を守るために骨身を削る妻、悪知恵のはたらく伯母、窃盗癖をもつ姉、人間観察を続ける弟。それぞれの立場を交錯させたドラマ展開が絶品そのもの。
極めて穏やかな作風だが、登場人物の細かな言動をクロースアップさせつつ、フォトジェニックな映像を衒いなく挟み込んでくるため、興味の持続が促される。汽車と蛇を示唆的に登場させながら、「生きることの意味」を提起させる語り口が巧い。