Kientopp552

銀座化粧のKientopp552のレビュー・感想・評価

銀座化粧(1951年製作の映画)
3.0
 「終戦」は45年であるから、その5年後である。闇市が蔓延っていたのは、束の間であったのであろう。一様は、「戦後復興」が終わったかの感さえある。特需景気を促す朝鮮戦争が同じ50年に勃発する。日本の、西側諸国一部からの主権回復となるサンフランシスコ平和条約の締結はその一年後、つまり51年で、本作の上映年の年である。こんな時代であれ、主人公雪子が一人息子と住む、戦災にも焼け残ったという、新富芸者で有名な新富町にある借間は、長屋の一軒家にある。この頃未だ来ていた山手の「上客」が寄る繁華街たる、モダンな銀座と好対照をなす新富町である。東京生まれの、職人の息子、監督成瀬は、ここら辺の下町の雰囲気は肌身で感じていたのであろう。ストーリー展開の端々に、チンドン屋や紙芝居屋のシーンを挿入する。とりわけ、二回も出てくる紙芝居屋のシーンは、ファンファーレのような大きなトラペットを吹き鳴らし、その後ろに、ハーメルンの笛吹きよろしく、子供達を引き連れて歩く紙芝居屋の姿はユーモラスでもあり、印象的である。ここに、庶民の日常をさり気なく描く監督成瀬の思い入れが感じられる。
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