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夏物語のrsのレビュー・感想・評価

夏物語(1996年製作の映画)
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その愛に気づかぬまま、誰かの想いを波の向こうに置き去りに……

理想の女、良い雰囲気の女の子、そして唯一心を開ける女友達。そんな彼女たちの間で彷徨う青年の、ひと夏のヴァカンス。

彼と女性たちが散歩するシークエンスは三者三様で、逃げ場をやらないと男は死にますよ、と告げている。

あんなに素敵な女の子の視線にも気づけずに、青年には選ぶという強さがなかった。
鳴り止まない電話の後、偶発的な選択肢に逃げ込んだ彼。「偶然が習慣になる」という言葉がよぎる。

冒頭とラストは、入港と出港の画が対を成す。
冒頭でカメラが追う青年の背中と、ラストで遠目に眺める女の子の背中。赤が弾けていた彼女の服は、いまやネイビーに落ち着いていて。キスの後の、痛みが走ったようなその表情。
心はいつの間にか、かつてポーリーヌだったあの子に寄り添っていた。
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