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彼奴(きやつ)は顔役だ!のENDOのレビュー・感想・評価

彼奴(きやつ)は顔役だ!(1939年製作の映画)
4.3
怒涛の栄枯盛衰。叙情すらも暴力の速さに飲み込まれる。第一次世界大戦後の復員で短気で素直なキャグニーは禁酒法時代にタクシー運転手から組織のボスへと成り上がる。歌手の卵プリシラ・レインと弁護士の戦友ジェフリー・リンが初めて目線を交わす場面で恋の萌芽を予感させギャグニーの想いは既に実らないことが判明する。レインの愛らしさと凡庸な歌唱力のギャップが観客の気持ちをまごつかせる。大量の粉チーズをかけてスパゲティ(当時はイタリア人を揶揄される演出によく使われる)を頬張るポール・ケリーに協力を断られ国営倉庫を襲撃!報復で幼なじみは経営する店の玄関に打ち捨てられる(死体は数秒しか映らない)レストランでの戦闘では揺れる扉越しにケリーを背中から銃殺し仰反った死体は再び扉を押し開けて手前に倒れる。レインを思うキャグニー、ギャグニーを思うグラディス・ジョージのすれ違いはメロドラマ。ゆすりを受けた判事である旦那の命を守るため落ちぶれたキャグニーに救いを求めるレインの期待こそ残酷!ジョージも愛するキャグニーの背中を押して死に至らしめる(ファスビンダー的愛の搾取)ボギーの本拠地で人を盾!にして窮地を脱するキャグニー。被弾し2階の手摺りから落下する敵と階段落ちする敵が切り返しと共に同時に画面に収まる恐ろしさ!ギャング映画の最高峰でしょう!
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