イチロヲ

恋する幼虫のイチロヲのレビュー・感想・評価

恋する幼虫(2003年製作の映画)
4.0
少年期のトラウマにより人間嫌いを拗らせている漫画家が、男性恐怖症の女性編集者を吸血クリーチャーへと変身させてしまう。劣等感に苛まれている男女の自己実現を描いている、ホラー・コメディ。

本作の主人公は、憧れのお姉さんに対する窃視行為を、恐怖体験として脳内に焼き付けている厭人家。ほんの些細なことで自棄を起こしてしまう、典型的なコミュニケーション障害者でもある。

一方、吸血鬼と化したヒロインは、頬に腫瘍ができて、肛門のような穴からトゲを出す。主人公とヒロインの両者が、常に被害妄想に駆られており、自分の殻に閉じこもっているところが醍醐味。主従逆転の倒錯ドラマへと移っていく作劇もまた面白い。

井口昇監督の初期短編のモチーフを集約させたような作品であり、とりわけ「パートナーのグロテスクな面(ハンディキャップの面)も愛することができるのか?」という、「春琴抄」的な要素が、純粋な感動を呼び覚ましてくる。
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