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ファニーとアレクサンデルのIkeのレビュー・感想・評価

ファニーとアレクサンデル(1982年製作の映画)
4.5
イングマール・ベルイマンが集大成的に作り上げたと言われる1982年のスウェーデン映画です. 大作だけあって見応えはあるし、内容もばっちり肯けるものでした.
ファニーとアレクサンドル兄妹を取り囲むエクダール一族の人物像を丁寧に描き、ベルイマンの内部思考を各人物に分散させるベルイマンのお家芸が巧い(だからこそ5時間を必要とするのだが). ただ、60代半ばになったベルイマンの到達点として観るのも良いのだが、彼自身を100%投影してしまうのも少し違う気がした. 例えばあの大司教などは勿論父親が部分的に入ってはいると思うんだけど、結局ベルイマンは最終的に父親と和解した上であれなのでよく分からない. 母エミリーも然り. それだけ彼の苦悩が深いということなのかもしれない.
何はともあれベルイマン云々を抜きにしても十分面白かったので私は満足した.

撮影面はというと素晴らしかった. 実家の煌びやかな明るさと教会の冷たい暗さの対比がすごい. 実家のような安心感を感じていたと思えば、シーンが教会に移り変わるだけで空気が張り詰める. スヴェン・ニクヴィスト様様でした.


…苦言を一つ呈するとすれば時代考証はだいぶ怪しかった. 時代は1900年代であるはずなのに所々現代感があること、そして大司教がハッブル=ルメートルの法則(宇宙の膨張、天体の後退)を知っていたことだ. 日本語字幕だったけど本当にそう言ってたのかな. 1900年代と言えばまだ特殊相対論が出るか出ないかという時期でアンドロメダ銀河が銀河系内のものか外のものかの区別すらついていない時代だ. もし本当に大司教が知っていたのだとしたら今すぐ偽善大司教なんてのはやめて学者になるべき…野暮ったくてごめんなさい.
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