このレビューはネタバレを含みます
9.11で失った最愛の父との繋がりを失わないよう、ただ一つのものを探し求めるオスカーの行動は一見現実逃避のようにも思えるかもしれない。彼は調査の中で様々な人と出会い、会話を重ね、その優しさに触れていく。途中からは一緒に行動する仲間だってできた。太々しく生意気な態度がすぐに改まることは無いところがいかにも齢10の少年らしいが、そんな経験を通して確かに彼は成長していただろう。
しかし、時には熱中するあまり真実を見失い、現実から目を背け、たった1人の母を怒りと混乱に任せて罵倒する場面もあった。だが母はそうした行動を無理にやめさせることはなく、密かにサポートまでしていた。彼を取り巻く人々は、常に彼のことを優しく見守り、彼の気が済むまで好きなように行動をさせた。これほどの愛情があるだろうか。
全てのことが明らかになり、たとえ望んでいた結果では無かったとしても、この行動にかけた時間と努力が否定されることはない。「もう大丈夫」と言い切った彼の言葉と、屈託のない笑顔がその全てを物語っていた。