Chihiro

ものすごくうるさくて、ありえないほど近いのChihiroのレビュー・感想・評価

4.8
絶対に言ってはいけない言葉
ママだったらよかった、あのビルにいたのが。
分かっているのに、人間はつい言ってしまう事がある。
その言葉がどれほど相手を傷つけるか、分かっているのに。

多くの人が自分のことでいっぱいいっぱいになる。抱えてるものが大きすぎてつい他人にぶつけてしまう。その抱えるものが納得や理解が簡単に出来るようなことでなければ、なおさら、その不条理さにさらに大きなものが圧しかかる。そして塞ぎ込む。

言ってはいけない言葉を分かっているのに言ってしまった時オスカーは、本心じゃないと、精一杯の訂正する。
だけど出てしまった言葉を消す事は出来ないし、二度と言葉にする前の世界に戻る事は出来ない。

分かっていても謝る事が出来ない人間が多い中、オスカーの幼さと純粋無垢な愛が見える。
オスカーはまだ子供でこの悲劇を受け入れるなんて出来るはずない。

ただ彼は誰よりも賢くて、考える力を持っている。だからこそ、だからこそ父の存在がなくなること、亡くなったことを受け入れなければならない、自分の世界から少しずつ消えていっていることをどこかでとっくに理解している。彼なりのさよならの仕方を彼自身で見つけ出したこと、没頭することで父を近くに感じられて、同時に消えていくことを感じていくこと。すごく上手に描かれていた。

そして母の全てを包む愛情。たくさんの人との出逢い。
ブランコを強く漕ぐ姿に心打たれました。
Chihiro

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