尿道流れ者

この空の花 長岡花火物語の尿道流れ者のレビュー・感想・評価

この空の花 長岡花火物語(2012年製作の映画)
4.6
東日本大震災が起きたとき、関東に住むライトな被災者だった僕はテレビで観たり、東北出身の友達の話を聞いたりして、こんな悲劇が戦争のような人の手で起きていたものだったらと思うと怖くてたまらなかった。

この映画でも戦争と震災、昔と今が交差する。長岡という第二次世界大戦で隠れた大きな被害者だった土地は中越地震と東日本大震災という天災を受けていた。そしてその弔いと復興への祈りを込めて長岡花火を上げている。過去を伝えて未来を少しでも良くするために。

ドキュメンタリーのように長岡の歴史をなぞっていくこの映画は反戦への思いで溢れている。戦争観はとてもデリケートなものだから、その観方が弱いと浅く感じるし、強すぎると押し付けがましく説教くさく感じる。この映画ははっきりいって主張が強すぎるパッションでされる。しかし、うっとうしくはない。この映画の主張は戦争への憎悪であり、戦争国への憎悪はなく、過去への非難や後悔よりもこれからの生きていくあり方を訴えるものなので、デリケートな問題にとてもフラットな立ち位置で語っているように観える。何よりも生きる力へのパッションが凄まじい。パッション屋良がクールぶってる人間に見えるほどの熱さ!その熱さに触れるたびに涙が出てしまう。
またこの映画が説教くさくなってないのには映像のハジけっぷりが大きくある。リアルではない演技、合成映像や踊り、画面にでるテロップは戦争からじゃがいも掘りまで細かく言葉を拾う。長岡花火が上がって感動的なラストに向かうところで出る大団円というテロップには笑った。音楽も素晴らしいし、一つ一つのセリフも印象的。痛いな!この雨痛いな!は忘れられない。

戦争のような悪意こそなけれども、今の人びとは震災という大きな痛みを共有している。生きている僕らにはまだこれからがある。人を思う想像力があれば世界中の爆弾を花火に変える時間はある。戦争にはまだ間に合う。