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オール・ザ・キングスメンのzhenli13のレビュー・感想・評価

オール・ザ・キングスメン(1949年製作の映画)
4.0
台詞が多いけど登場人物の心情を説明するような台詞は少ない(自分の気持ちを語るのはジョアン・ドルーくらい)ので、色々想像ができて面白い。個人的には女性たちの様相が興味深い。

ウィリーを演ずるプロデリック・クロフォードの妻は元教師で、夫がつっかえつっかえ法規を覚えるのを澱みない暗唱で支えるなどステージママさながらの様子から、どうもウィリーより彼女の方が優秀で、世が世ならこの人が出馬したほうがよかったようにも見える。しかし彼女はウィリーがニ度目の知事戦に出るくらいから全く登場せず、後半はただ付き従う人になったかのようになるが、何か言いたげな無言のリアクションショットなども添えられる。
対抗馬の秘書だったマーセデス・マッケンジーはウィリーを唆して無理やり酒を飲ませ、後年彼は酒無しでいられない身体になる。マッケンジーはウィリーの秘書となりいつのまにか恋仲になっている。
彼女たちの行動が、駆け出しのウィリーを狂わせる引き金を用意したかのようにもみえる。
また、ウィリーの片腕であるジョン・アイアランドの恋人だったはずのジョーン・ドルーもさらにウィリーと恋仲になり、どちらかというと彼女の方が本気でウィリーに入れ上げる。
そういった女性の描写はあくまで副次的なものではあるが、ウィリーの権力ゲームへ少なからず影響している。

ポピュリスト的な語り口で労働者を惹きつけるウィリーはいずれ権力ゲームの虜になってしまい、でも賄賂を使い権力を集中させて恣にすることはウィリー本人にとってあくまで手段に過ぎず、だんだん悪人になっていったというより、本人は自分は悪人だと思っておらず善行を行なっていると、本気で思っているのではないかという感じもした。でもその最終目標は大統領になるという権力ゲームの頂点ではあるのだけど。
知事になって、やることがハコモノと道路をバンバン作ることでまさに自民党的だが、彼は権力ゲームに夢中になれるだけまだ幸せだったのかもしれない。

以前『あの子は貴族』観たときに思ったけど、ほとんどの政治家、日本なら特に与党議員などは、権力ゲームに夢中になる以前に様々なしがらみに絡め取られて奔走するだけで精一杯なのではと。何が善くて何が悪いかなど考える暇も無いのでは。世襲議員なんかは特に、血族にがんじがらめになり敷かれたレールをただただ往く様子が『あの子は貴族』で描かれてた。
こいつのやってることは何なんだと心中疑問に思いつつしがらみや利権から抜け出せなくなってたのが、本作ではウィリーの妻や、新聞記者からウィリーの片腕となったジョン・アイアランドなんだろうか。
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