このレビューはネタバレを含みます
主人公の動向をすべてに捉えてしまうと、この映画は、理不尽な形で刑務所に入り理不尽に扱われた男が知恵と忍耐と思いやりを駆使して脱獄を図るというストーリーになる。
それよりも脇役のストーリーに最も考えさせられるものがあった。
それは刑務所に誰よりも長くいたおじいちゃん。施設内の図書館で懸命に働く彼は、まるで過去に凶悪な犯罪を犯した人物とは思えないくらい、優しい目をしていた。刑務所に入って人生が変わってしまったはずなのに、彼の人生は、服役している誰もがうらやむ仮釈放通告を期に大きく狂ってしまう。待ち望んでいたであろう外の世界にただならぬ恐怖感を感じ、50年以上も閉じ込められていた刑務所を想って自ら人生に幕を閉じることを選んだ。刑務所で静かに人生を終わらせるのが、実は彼にとって一番のいい死に方だったのだろう。
刑務所は地獄で、釈放は心の解放という解釈が当たり前だと考えていた。時の流れがもたらすものは図り知れない。
スーツを着てバスに乗られている彼のおびえた表情と、Brooks was hereの文字が非常に目に焼き付いた。