愛子

海の上のピアニストの愛子のレビュー・感想・評価

海の上のピアニスト(1998年製作の映画)
4.0
レポート課題のため鑑賞
彼が恋に落ちる瞬間を閉じ込めた旋律の、甘く優しい美しさ、そして切なさに涙がでた
陸へと降り立つ決意を固めることが出来なかった彼を臆病者であると言ってしまえばそれまでだけれど、ずっと生きてきた世界のすべてを手放す覚悟を決めることはとても難しいことで。
陸で生きる私たちは、海に対して果てしなさを感じ、畏敬の念を抱くけれど、海の上で生まれた彼にとっては、陸こそが永遠に続くかと思われるほどの果てしなさを持つ存在であったのだろうなと思う
「何かいい物語があって、語る相手がいる限り、人生捨てたもんじゃない。」この台詞をなぞりながら、「みみずくは黄昏に飛びたつ」という川上未映子さんとの共著で、村上春樹が語っていた「たとえ紙がなくなっても、人は語り継ぐ。それが良き物語でさえあれば。」といった内容の言葉をなんとなく思い出した。
誰の人生においても光が差す瞬間、眩しい瞬間は存在し、それらの物語によってひとは生かされていて。
いい物語がある。そして語りたい相手がいる。その限り人生という営みには生きる価値があり、そしてそんな風に思いながら彼の話を語り継ぐマックスが居る限り、彼もまた、良い物語の一部であり続けるのだろうなと思います。
愛子

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