似太郎

走り来る人々の似太郎のレビュー・感想・評価

走り来る人々(1958年製作の映画)
4.8
ラストの遊園地の追跡シークエンスが印象に残る、一人の男と上流階級との摩擦を描いたヴィンセント・ミネリの隠れた名作で、ヒロインのシャーリー・マクレーンが可愛く撮られてある。

MGMカラーのバタ臭い映像で綴られるフェリーニの『甘い生活』✖️『カビリアの夜』みたいなストーリーが展開される大人の恋と社会のはみだし者たちによるヒューマン・ドラマ。

『地上より永遠に』(本作と同じ原作者)でアカデミー賞を取ったばかりのシナトラが、自己矛盾に悩む兵役を終えたロンリネス漂う中年男を好演する。またディーン・マーティンが主人公のシナトラのお悩み相談相手を務めており、そちらも見所の一つ。

ミネリ監督のバカ丁寧な演出が光る、上流階級の空虚さを淡々と描いた心理描写が圧巻の出来栄えの作品。メロドラマのような、サスペンスのような渾然一体としたジャンル分け不可能な感じのある渋い名編。
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