ペプオ

バンデットQのペプオのレビュー・感想・評価

バンデットQ(1981年製作の映画)
4.1
*長文、途中からネタバレ注意*

バンデットQ (原題:Time Badits)見ました。名前だけは聞いた事があったバンデットQ。自分でもテリー・ギリアムファンと自称してる割には彼の作品を見れていない私めでございます。それでもファンだと言い切れたのは未来世紀ブラジルをメチャクチャ気に入って高く評価しているから。その前には12モンキーズも見てましたが、これも傑作でした。その後、オンタイムでゼロの未来を見てもう富野由悠季並みにオワコンかなぁとか思って悲しいわけですが、たまたまテレビで見たバロンがこれまた素晴らしく録画してたので何度も見返した程です。

そして、バンデットQですが、満点に近いですね。星にすると4超えぐらいですが、言う事なしかなぁ。ケチつけ無しレビューになるかもしれません。

バンデットQなんで気に入ったか。

〜テリーギリアムの冒険SF〜
昔は知らなかったのですが、バロンを見た時にこの人は子供向けに楽しくなる元気をもらえるポジティブな夢を与える作品を作っていたんだ知りました。
本作もまさにそれでバンデットQって邦題がイマイチで分かりにくいですが、Time Banditsと言えば少し分かるのは時空を超えた盗賊の話である事。主人公は少年でこの盗賊達と一緒に時空を超えた旅に出ます。テリー・ギリアムというと皮肉なコメディが彼の味でもありますが、当然それはあるんですが、どちらかというと不条理コメディ(これも持ち味)のタッチでずっと進みます。最後まで貫かれていたと言っていいでしょう。なので、子供から見ればちょっとダークなコメディ冒険SF、大人から見れば変わったコメディ少年冒険SFといった感じに受け取られるかと思います。
これが面白い。素直に。

〜テリー・ギリアムは初期スピルバーグの夢を見るか〜
この少年冒険モノって初期スピルバーグ、端的に言えばETとか未知との遭遇(心は少年のおじさん)を想起させます。テリー・ギリアムも昔はこういう作品を作っていたのですね。ただ、スピルバーグは自身の経験からETなら父親との不和、未知との遭遇なら嫁子供捨てでも自分を理解してくれる人の方に行っちゃうなど私情がからみまくってるわけですが、テリー・ギリアムのこの手の作品にはそれは感じられません。ただ、どうしても絵は重いし汚いし、ダークな雰囲気とブラックコメディは欠かせません(コメディアンですからね、スピルバーグも笑えないコメディやりますけどw)。この絵的な所は完全にテリー・ギリアムワールドです。私は大好きです。テリー・ギリアムがスピルバーグを目指したとは全く思いませんが、同じような道をかつては歩いていたのだと思いました。

〜テリー・ギリアムワールド全開〜
絵的にテリー・ギリアムと分かるっていうのは、まずは美術です。テリー・ギリアムって美術になんでそこまでってほど拘ります。そして、特撮大好き、使いまくり。特撮好きとしては嬉しくなってしまいます。
そして、もう誰もが思うであろう、大好きな小人俳優達をとうとうメインにすげてしまってるところは完全にテリー・ギリアムワールドですね。ここまで来ると偏愛としか言えません。途中ナポレオンが小人達を褒めて溺愛しますが、テリー・ギリアムにしか見えませんでしたね。
小人俳優が6人?も動き回っていると、どうしたって絵的にコメディなってしまいますし、さらにコミカルな曲を場違いな所でも使いまくる手法はテリー・ギリアムの皮肉っけや意地悪さがよく出ててサイコーの一言ですね。

〜他には無い冒険SF〜
時空を超える冒険SFは恐らくかなりの数が作られているでしょう。ただ、本作が他とは違うのはやはり上記のテリー・ギリアムらしさがあります。ただ、それだけじゃレビューにならないので、少し突っ込むと設定が捻ってあります。SFと書きましたがこれは時空を超える設定がそうなのであり、本作の根幹にあるのはキリスト教です。テリー・ギリアムがキリシタンかは分かりませんが、小人の盗賊達は神の手下すなわち天使なんですね。メッチャ小汚いですがwそしてちゃんと魔王も出てくる。そういう意味ではファンタジーに近いかもしれません。子供達にはこちらの方がウケるかもですね。

〜オチまでテリー・ギリアム流〜
本当の最期に、主人公の少年はベッドで目覚めます。家が火事なのです!父親も母親も無事でした。そして観客が思うのは、まさか夢落ち?そこはテリー・ギリアム、そんなことしません。どこかの時空で出会った戦士が消防士になっており、鞄の中にはバンディッツなどの写真。そして目の前の両親の間のトースターには魔王のカケラ!そう。全ては現実だったのです。両親は息子が止めるのに、魔王のかけらに手を出して爆死します。繰り返します。両親は爆死します。でも、最初から一貫して爆死させたくなるダメな両親(千と千尋が似てます)として描かれており、テリー・ギリアムはちゃんと爆死させます。
そして、流石にやり過ぎと思ったのか、エンドロール後に主人公とバンディッツが楽しそうにしている絵と音声を流して終わります。

以上、駆け足でしたが、バンデットQが何故心を掴むのかを書きました。

ただ、やっぱり少しはテリー・ギリアム作品を見ていた方が彼の流儀・作法に慣れて楽しめるような気がします。
大体面白いので是非。
あ、ゼロの未来から入るのはオススメしませんw
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