Jimmy

一人息子のJimmyのレビュー・感想・評価

一人息子(1936年製作の映画)
4.5
小津安二郎監督の初トーキー作品。
親は子供に期待し、子供は親に期待される関係の「理想と現実」を描いた傑作である。

冒頭、「人生の悲劇の第一幕は 親子になったことに始まっている ~侏儒の言葉」なるテロップ。小津安二郎監督は、第一幕として親の失望を本作で描いているが、本作で描いていない部分(第二幕)での子供が勉強して出世するような余韻を残す。

小津安二郎監督作品には、似たようなモチーフで製作された映画が結構あるが、この映画も『東京物語』と同様に田舎から東京へ親が一人息子を訪ねる。

・1923年信州-母親(飯田蝶子)が小学生の子供を育てている。中学校に入れるかについて苦悩する。学校の先生(笠智衆)からも「子供は中学校に入れて偉くさせた方がいい」と言われて、中学生とさせることにする。
・1935年信州-年老いた母親が、掃除婦として働いている。
・1936年東京-東京の息子(日守新一)を訪ねると、いつの間にか結婚していて、子供(孫)まで生まれている。久しぶりの再会であるが、市役所に勤めていた息子は市役所を半年前に辞めて、夜学の先生をしている。貧しい生活。母親を映画に連れて行き「これがトーキーって言うんですよ」と説明するが母親はウトウトしている。東京に出てきた先生に会うと、とんかつ屋を営んでいる。そんな折、母親と夫婦家族で遊園地に行こうとする矢先に、隣人の少年が馬に蹴られる。病院に付き添った息子(日守)は隣人になけなしの金を譲る。その場面、感動もの。

淡々とした流れの映画である本作は、小津安二郎監督作品らしく、間をとりながら深い想いを込めたセリフが心を打つ。
素晴らしい傑作である。
Jimmy

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