佐藤克巳

一人息子の佐藤克巳のレビュー・感想・評価

一人息子(1936年製作の映画)
5.0
真打小津安二郎監督の初のトーキー映画は、ペーソス溢れるリアリズムの粋をいく傑作。息子日守新一は上京して24歳、既に妻坪内美子と赤ん坊を抱える夜間教師で、双六では上がりに近いと、母飯田蝶子を落胆させる。しかし母は、息子が隣の奥さん吉川満子の子突貫小僧が馬に蹴られ負傷すると、一目散になけなしの金で救済した行為で見直し帰郷。息子も、母を再度呼ぶため更に奮起する決意を妻に訴え希望を持たせて終了する。なお、前半から出演者は笑みが絶えないが、人間は苦しい時ほど笑って見せるのが常で、兎角世の中は、子は親の期待に応えられないが現実なのだが、出世だけが偉い訳じゃないと痛切に語った感動作。
佐藤克巳

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