MasaichiYaguchi

青いパパイヤの香りのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

青いパパイヤの香り(1993年製作の映画)
3.9
1993年・第46回カンヌ国際映画祭でカメラドール(新人監督賞)を受賞したトラン・アン・ユン監督の長編デビュー作は、パリ郊外のセットに再現されたサイゴンの一軒家を舞台に、1人の少女の成長を瑞々しい映像で叙情豊かに描く。
1951年のベトナム、10歳の少女ムイが、サイゴンで暮らす一家のもとへ奉公にやって来る。
その家には、琵琶ばかり弾いて何もしない父と、布地屋を営む働き者の母、社会人の長男と2人の弟、そして祖母が暮らしていた。
一家にはかつて幼い娘がいたが、父が家出している間に病に侵され、そのまま死んでしまっていた。
先輩の奉公人から仕事を教わり、朝から晩まで懸命に家事をこなしていくムイに、一家の母は亡き娘の姿を重ね合わせるのだった。
或る晩、長男の友人クェンが一家を訪れ、ムイは彼に密かな憧れを抱く。
本作は台詞は少なく、物静かな中に繊細な人間模様が描かれていく。
また映画では、ムイが調理を手伝うベトナム料理が度々登場するが、それらが美味しそうで食欲がそそられます。
静かで叙情的な本作は、独特な世界観で我々を魅了し、多幸感溢れる余韻を残します。