豚肉丸

流れ者図鑑の豚肉丸のレビュー・感想・評価

流れ者図鑑(1998年製作の映画)
4.3
愛していた不倫相手と別れた男が、再び新しい不倫相手と自転車で北海道に行くお話

AVバージョンを鑑賞。
『わくわく不倫旅行』の時に旅行した由美香と別れた平野は、女優兼映画監督の女と一緒に北海道旅行に行く。前作を鑑賞していないため、前作との比較は難しいのだが、この映画単体だけでも今回の女性を愛しておらず由美香をずっと引きずっていることが窺える……冒頭の「追伸、由美香様」というテロップもそうだし、途中ギスギスして気まずくなった時に「由美香とここに来たことがある」と思い出に浸っていたのもそうだし。『監督失格』で述べられていた通り、この映画は由美香との代わりにはなれなかった。
つまり、この映画は2時間ずっと気まずくて関係がギスギスしている男女が自転車旅行している様子を映す。
序盤はまだマシなのだが、天候が悪化し物事が上手く運ばなくなると、次第に関係がギスギスし始めて「カメラで撮影する」という行為に暴力性が宿っていくようになる。男女が徐々に壊れ始めた時、女はカメラに向かって自分は楽しんでいると言い聞かせるように唱える。
監督の男はカメラを観客の方向に向けて、ドキュメンタリーとしての出来を第一に映像を撮るが、一方で女は自分にカメラを向けて自分自身の欲求のために映像を撮る。そもそも「撮影する」という行為が持つ意味が両者ともすれ違っているため、関係は噛み合わないし旅行が進むにつれて関係はどんどん悪くなって二人とも狂っていく。
一方で、『流れ者図鑑』というタイトルの通り道中出会う旅人との交流はなかなか面白い。特に、旅行中に何度も出会うクリ坊のお気楽さが良くて、彼のお気楽さと二人のギスギスが対比しているようで面白かった。(ギスギスの原因はクリ坊に関わることなんだけど、彼は何にもしていないのに勝手に巻き込まれただけという……)

平野勝之監督なのでやっぱりうんこで終わる。イチジク浣腸を何本か入れてうんこを漏らさずに走りきれ!という最悪な『恐怖の報酬』にはちょっと笑ってしまった。酷すぎる。

AVと言っても絡みの場面は殆ど無い。AV版で付け足された『恐怖の報酬編』を抜かせば一分にも満たないし、『恐怖の報酬編』を入れても2時間の内10分ぐらい。
人が狂う様子を見られる良いドキュメンタリー映画でした。『由美香』もいずれ見たい。
豚肉丸

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