Iri17

光のほうへのIri17のレビュー・感想・評価

光のほうへ(2010年製作の映画)
4.4
弟が死んでしまったという少年時代の経験から、2人の兄弟は不幸の中に深く潜水したまま浮き上がる事ができない。光のほうへ彼らは向かうことはできない。
しかし、この映画はトマス・ヴィンターベアの暖かさ、ぼんやりとした明るさがある点が素晴らしい。
ラース・フォン・トリアーにはない、彼特有の暖かさに包まれた映画だ。

成長した兄弟の交流は少ないし、アクションはほとんどない。とことんリアルな映画だ。これは目を逸らしてはいけない現実なのだ。
彼らは暗く辛い場所で生きる。弟を救えなかった自分たちの罪を背負うためだ。だから2人共わざと辛い人生を歩み、他人の罪を自ら被る。

幸福度世界一の国の全く幸福ではない兄弟と汚れた部分を描いた傑作である。トリアーにはない、暖かさをヴィンターベアはラストに感じさせてくれる。自分たちのように溺れないように幼い甥っ子を兄は手を引いて生きていく。自分のように潜水したまま浮き上がれなくなる前に。失った手の代わりに得たものは幼き甥っ子を救う神の手だった。
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