靜

ブラッディ・パーティの靜のレビュー・感想・評価

ブラッディ・パーティ(2010年製作の映画)
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2011年頃、渋谷のシアターNで公開されていたのを鑑賞した。シアターNは、大手を振って公開されることのない際物映画をたくさん観させてくれた大好きな映画館。本当によく通った。映画館までの道のりも、再開発で面影もないのだろうな。

みんな大好きヴァンパイアジャンルとして紹介してくれたのだと思うけど、めちゃくちゃクィアな作品で、その当時まだ国際レズゲイ映画祭以外ではなかなか劇場でお目にかかれない部類のものだったから、喜び勇んで鑑賞に行った。以下、当時の感想。

これは、ノンケ女性に恋をしたビアンが強引なアプローチを仕掛けた末、相手が落ちるか?と淡い期待を描いた矢先にひょいっと男に持ってかれるって話そのものじゃないか!
それをヴァンパイアに置き換えて見せ、そして最後は人魚姫になるというのね。

予告ではB級感があったけど、蓋を開けてみたらスタイリッシュでした。
ヴァンパイアであるルイーズ、シャルロッテ、ノラの3人が、航空機内で殺戮をし終わったところから物語は始まる。操縦士まで殺してしまった彼女たちが、脱出するために夜空に飄々と飛び出していく光景に痺れた。踏み出す一歩に迷いがない。観に来てよかったと思った。

現代のベルリンで暮らすヴァンパイアたちは、流行の洋服に身を包み夜な夜なパーティーを繰り広げ、テキーラを飲むように血を飲み干して遊びに繰り出し、DJもするしクスリもやるしセックスもするセレブなのだ。ドイツ映画のクラブシーンって、大好き。ああ、格好よかったなあ。

男のヴァンパイアは傲慢さ故に人間に狩られたか自滅で全滅したことになっていて、以来、女だけしか仲間にしない掟らしい。「女の解放よ!」と、素晴らしい笑顔で高らかに言い放つノラ。結局その楽園は男によってバランスを崩すわけだけど。

主人公レナがヴァンパイアとして覚醒していく様子がとってもよかった。
スリ常習犯の薄汚いエモ少女が、変身後は髪の毛もサラッと伸びて肌艶も良くなり身に着けるものはすべて高級品でホテル住まいに夜な夜なパーティーなわけだから、本人も美しくなっていく自分にまんざらでもないって顔。
エモに信念はなかったのか!と、少しがっかりするけど。だって、変身前のショートヘアがすごく好みだったからね。確かに美しくなったけど、退屈な女になってしまったと思う。残念。
靜