YUKI

祇園囃子のYUKIのレビュー・感想・評価

祇園囃子(1953年製作の映画)
4.7
傑作は次の時代を内包しており、時間を超えて語りかけることができると思っているのだが、まさしくそういった内容。
京都の色街に根付く、艶やかだけではない、舞子さんと芸妓さんの現実。

舞妓さん、芸妓さんと客の関係は「良い遊び方の美学」のようなものでは支えられておらず、ある種の搾取とも言えるような関係において成り立っている。
ビジネスの商談をまとめたいからなんとか一肌脱いでくれ、なぞそんな商談やめてしまえとも思ったりするが、それが当時の感覚というものなのでしょう。

そんな環境の中でも、美代栄と美代春は常に連帯しているし、ある種のシスターフッドのようなものを感じる。
また、美代栄が窮地に陥ったとき、他の舞子が彼女を気にかける(程度の差はあるが)のも、厳しい現実の中での唯一の救いのようにもみえる。

加えて、劇中にお花の先生が舞妓さんたちに、「舞妓は無形文化財」「世界に誇る文化なのです」とその心構えを説いているのですが、これがなんとも現代的というか、やはり外部の視点を持って自らの評価を下すような態度はそれこそ伝統芸能なのですね。

この映画は70年前のものですが、この映画が進歩的だったのか、現代が実質的に70年前と同じなのか。
それは恐らく後者だと思いますが。
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