陸軍航空士官学校(兵庫県・豊岡)に通う生徒の半生記を題材にしたプロパガンダ映画。
ちょっと前に見た、できの悪いプロパガンダ映画「少年航空兵(1936)」と同じ監督だが、こちらはよくできてる。(初期の小津の下で助監督やってて、その後プログラムピクチャー御用達になった監督とのこと)
佐分利信が登場して五分で退場したのにびっくり。
女手ひとつで軍国少年を育てていって陸軍航空士官学校に入学。
つまりとんでもない優等生かつ、士官学校は衣食住がかからないのでかなりの親孝行でもあるのだが、そのあたりのことは語られない。
母は母で、軍需工場に働き口を求める。
このあたりのやりとりは、松竹映画の真骨頂。
プロパガンダ映画によくある、士官学校の実際の授業風景で学校の紹介にも時間を割く。
卒業後もボリュームがある。
台湾に配属されたことでタイトル回収。
松竹なのにミニチュア特撮にも力が入ってる。
戦火をあげたと同時に遭難するも、無事に帰隊。
国内で大ニュースになって、母とそのまわりがそのニュースを堪能するという展開。
「父ありき(1942)」の母親版、「陸軍(1944)」の子ども視点みたいな趣もあった。ただ、よくできてようが名画と似た構造を取っていようが、これはそんなに面白くはない。
終盤にあるプロット、休暇でふらっと寄った→お母さんと一緒に旅行のくだりがあっさりしててよかった。
後に会話で「あの子ったら、母さん握手しましょうなんていって、可笑しいんですよ」とやるのがよかった。
やっぱりプロパガンダ映画には、作り手側が巧妙に忍ばせた反戦メッセージがないといけない。その思いを一層強くした。