「パレスチナの情勢を前フリにしたコント集」
として表すと語弊があるような側面もあるが、実際にそこの緊張と緩和を用いたコントがいくつかある。例えば、リンチかと思ったら蛇を仕留めていたり、病院で深夜にタバコを吸い始める背徳感や緊張感から、分け隔てなくみんなが嗜んでいた話などである。
あまりにシュールだったりパレスチナの時世を反映しすぎたために理解できないものもあり、心の底から楽しいと思えるものではなかったが、単にパレスチナの状況を嘆くのではなくコメディに仕上げたことに意義がある作品。
キートンのようなデッドパンと仰々しいハッタリに旨みが出ていて、一つ一つの爆破や非現実的なCGシーンが派手であるのがとても良い。エルサレムの空中を漂うアラファト風船のシーンがシュールコメディの境地で素晴らしかった。
しかし、そうしたコント的笑いの奥に悲哀があり、全体に静謐な場面も多い。そんな温度感からなかなかに困惑させられるようなトーンの作品ではあるが、パレスチナとイスラエルの間の問題を取り上げた作品として重要作であり、なにより映像としての強度がバカ強い一作。