菩薩

ジュリアンの菩薩のレビュー・感想・評価

ジュリアン(1999年製作の映画)
4.0
ママが死んだ、世界は壊れた。姉さんはママになる、世界は治るはず。姉さんはママにならなかった、でも世界は続く。弟は強くなりたいらしい、パパは勝ち続けろと言う。僕は強くなるが分からない、勝ち続けるが分からない。姉さんはハープで上手に綺麗な音を出す、パパは下手くそだと言う、聴くに耐えないからやめろと言う。僕は上手が分からない、綺麗が分からない。綺麗だと思うもの、池のカメ、友達がくれた金冠、弾ける笑顔とボーリングのピン、くるくる回る女の子、姉さんが産んだ小さな赤ちゃん、けど赤ちゃんは動かない、どんどん冷たくなっていく。僕はジュリアン、命を司る者、人の命を奪える、多分自分の命も捨てられる、けどこの子は動かない、どんどん冷たくなっていく。朝も昼も夜も真夜中もカオス、カオス、カオス、カオス、世界はずっとカオスで満ちていて、世界はずっと壊れている。君には世界が見えているか、世界は君を見ていてくれるか、世界の声が聞こえているか、どうして僕の声は聞いてくれないのか。僕はジュリアン、壊れてなんかいない。僕はジュリアン、汚れてなんかいない。僕はジュリアン、死んでやなんかいない。壊れているのは世界だ、汚れているのは世界だ、死んでいるのは世界だ。僕は世界が嫌いだ、世界が僕を嫌うから。僕には世界が救えない、げど、それはもうどうしようもない。世界は今日もカオスで満ちている、僕は世界が大嫌いだ。
菩薩

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