原題は「Copie conforme」
コピー、コピー通り、コピーそのまま と訳す感じですね
「トスカーナの贋作」ですって!小じゃれてますわよ奥様
出会ったばかりの男女が束の間の疑似夫婦を演じる、
趣向としてはメロドラマ的フランス書院的ではありますが、
入り込み方が強すぎて観者にはどこまでが本気で
どこまでがおふざけかわからないんですね。
そんな応酬の中、あわや肉体関係の場面で夫役のセリフが妻と我々を現実に引き戻します。
「9時までと言っただろう」
役に入り込む前の会話を持ち出して、これ以上はだめだと
制するんですね。
そこで妻役は世間話として話題にしていた妹のくだりを持ち出して
寸劇もこれでおしまいね、と応える訳です。
ただ、そのあとが問題で御座ります。
鏡に映る自分の顔を凝と見つめる夫役。
こういう時に人が鏡を見つめるのは
いったん冷静になろう、落ち着こう、という心境からです。
私は私自身でジェームズではない、
このまま誘いに乗ったらどうなる?取り返しはつくか?
立ち去った後には結婚を祝福する鐘が鳴り続けています、
結局、確実に二人やってますねこれ。
居眠り運転のくだりはキアロスタミ自身の経験を
反映しているそうな。