【1933年キネマ旬報日本映画ベストテン 第1位】
小津安二郎のサイレント作品。坂本武演じる喜八が主人公の「喜八もの」の第一作。修復版は倍賞千恵子と寺田農が声を当てている。
戦友の喜八と次郎は日雇い労働者。喜八は富夫という息子がいる。あるとき偶然であった若い女春江は馴染みのおとめの店で働くようになる。喜八は春江に気があるが、おとめは次郎とくっつけようとする…
下町貧乏暮らしの人々の人情とすれ違う淡い恋心を軽快に描いた作品。ひさしぶりに心からほっこり出来る人情劇を観た気がする。
『残菊物語』でも知られる伏見信子のおっとりした美しさがいい。喜劇俳優坂本武のひょうひょうとした不器用な優しさ、『伊豆の踊子』などの二枚目スター大日方傳も見守りながらも男気をみせる次郎という役を体現していた。
ディテールの演出がとてもよく、クスッとするようなセリフも上手い。子ども演出は初期の小津らしい。子どもは子どもだけど無意識に大人よりも上の視点からみている感じというか。
サイレント映画ではあるがみんないい人な優れた人情ドラマ。小津作品では好きな方。