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出来ごころのmasahitotenmaのレビュー・感想・評価

出来ごころ(1933年製作の映画)
3.5
坂本武が演じる喜八を主人公とした小津安二郎監督の「喜八もの」(下町の人情もの)シリーズ第1作。
「喜八」は無知でだらしないところがあるが気が良くて人情があるという下町気質の人物で、後に渥美清が演じた「男はつらいよ」シリーズの「寅さん」の元祖。
原案はジェームス槇(小津安二郎)
脚本は池田忠雄。
撮影は杉本正二郎。
モノクロ、スタンダード、サイレント。
今回の鑑賞は「新音声版」で、声の出演は寺田農と倍賞千恵子。
(1933、100分)

男やもめの喜八(坂本武)は下町の長屋暮らしで、小学3年生の息子、富夫/富坊(突貫小僧)がいる。
隣に住む独身の若者、次郎(大日方伝)とは、ビール工場(こうば)で一緒に働いていて兄弟分みたいな付き合いである。
喜八は、次郎と一緒に行った寄席の帰りに、千住の紡績工場をクビになり行く所もなく立ち尽くしている若い女性、春江(伏見信子)が気になり、食堂のおとめさん(飯田蝶子)に頼んで泊めてもらう。
おとめさんは春江を気に入り店を手伝ってもらうことにする。
独り身の喜八は、この若い春江が気になってしょうがない。年甲斐もなく彼女に惚れ込んで、仕事にも行かず食堂に入り浸る。
ところが、春江は次郎の方にひかれていて、おとめさんはぜひ春江と次郎とを一緒にさせようとするが、次郎が春江を拒んでいた。
おとめさんは、喜八に次郎の説得を頼む…。

~脇役~
・床屋の親方(谷麗光):○○に金を貸す。
・先生(西村青児)と級長(加藤清一)
・医師(山田長政)
・会社の上役(石山隆嗣)
・船の乗客の一人(笠智衆)

"50銭(二分)"
"急性腸カタル"
"根室の蟹船"

「お半・長右衛門ってこともあらあなあ」

キング・ヴィダー監督の「チャンプ」からヒントを得たとされる親子(父と息子)映画だが、ストーリーは全く異なる。
変な噂になって近所の子どもたちから父親をからかわれた息子が、家に帰って父親の大切にしていた銀杏の盆栽をむしり、その後帰ってきた父と子の間で交わされるやり取りはこの映画のハイライト。
突貫小僧がとてもよい。
坂本武と飯田蝶子ははまり役。
伏見信子は純情可憐な娘の代表格。
大日方伝はニヒルで無骨な二枚目。
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